人生100年時代がすでに現実となりつつある日本。
統計的にも納得です。
厚生労働省の平均29年簡易生命表の概況によれば、
平均寿命 男性:81.09歳、女性:87.26歳
65歳時の平均余命 男性:84.57歳、女性89.43歳
となっています。
そして、4人に1人が男性は90歳、女性は95歳まで生きています。
25%ですから相当な確率ですよね。
言わずもがな、老後は長いのです。
というか、長いと認識して行動しないといけない、そんな時代です。
つまり、「長生きするリスク」が確率的にも一番高いなら、それに備えるのが合理的ということになります。
末永く人生を謳歌するためには「お金」と「健康」が必要ですよね。
ほかにも色々ありそうですが、「生きがい」もお金と健康あってのものと考えましょう。
そして今回は「資産運用」がテーマですので、お金について書いていきます。
こちらの記事を読めば、「なぜ一刻も早く、資産運用に取り組むべきか」がわかるはずです。
平均値を鵜呑みにしてはいけない
みな、長い老後に不安を感じています。不安がない人はいないでしょう。
年収の高低にかかわらず、ほとんどの人がそう感じているのです。
(所得が2,000万円以上ある世帯は1.3%*しかありませんので、一応統計上も納得できます。)
*厚生労働省「平成29年 国民生活基礎調査の概要」
ただ、後述するように収入が高くても支出が過大だとお金は貯まっていきませんが。
多くの人は、メディアや金融商品などの販売業者が平均値を使って老後の収支を見せ、「老後は○○万円必要」などというのを見たことがあるかと思います。ただこれらはあくまで目安なので、統計上の平均値を鵜呑みにして自分にそのまま当てはめる必要はありません。
平均はあくまで参考です。
ではいったいいくら準備すれば良いのか。
それを把握するには、自分の希望に基づく将来のプランニングと設計が欠かせません。
「どう生きたいか」を考えるということですね。
そして、その設計に基づく資産形成が必要になってくる訳です。
老後過ごせる時間
具体的な方法を見る前に、ちょっと老後どれだけの時間があるのかを見てみましょう。
OECDの2017年調査によると、日本人の平均年間労働時間は1,710時間。
年間休日が120日なら、1日約7時間働いたことになります。
通勤が往復2時間、睡眠が7時間なら自由な時間は8時間。
(ちなみに通勤時間が1時間減ると43年間で10,535時間も自由時間が増え、自己投資に使えるので住む場所が人生に与える影響は大きいのですが、それはまた別の話なので今回はスルーです。)
22歳から65歳まで働いたとすると、8時間×245日×43年=84,280時間
120日分の休暇は17時間×120日×43年=87,720時間
合計172,000時間です。(大きくは変わらないのでうるう年は考慮していません)
多くの人は残業や休日出勤などでもっと働いていると思いますので、ここから1割減らしてみます。
そうすると154,800時間(172,000時間×0.9)になります。
今度は65歳以降の時間を見てみます。
当然ながら通勤時間はなくなります。
睡眠時間は7時間で変わらないとすると、毎日17時間も自由時間があります。現役時代の土日と同じです。
17時間×365日×25年=155,125時間
17時間×365日×30年=186,150時間
なんと25年間でも現役時代と変わらない程の時間が待っています。
それに、現役時代は子育ての時間もありますので、自由時間はもっと少なくなります。
老後は睡眠時間も短くなるので、実際はもっと長いかもしれません。
(年を取れば光陰矢の如しが益々加速し、体感時間は違うかも入れませんが)
ちなみに、心身ともに健康で自立した生活ができる健康寿命*は平均寿命よりも若いので、70歳まで働きたいという人が増えてきたとはいえ、ずっと働き続ける訳にはいきません。それに、楽しいセカンドライフだけでなく、70代も後半になってくると要介護者も増えていくため、その辺も意識する必要があります。(*男性72.14歳、女性74.79歳、厚生労働省2016年)
ということで、「長い老後にはお金が必要」ということを老後の時間という観点から数字で見た訳ですが、、、やっぱり不安しか残りません。というか益々不安が募るばかりかもしれません。
不安を減らすには・・・
通常、不安はなんらかの行動の原動力になり得ます。
ところが、特に何もせずに不安をそのままにしている人の方が多い印象です。
みな公的年金は今もらっている人たち程もらえないどころか、相当目減りすると思っているのにも関わらずです。中にはまったく公的年金を期待していないと思っている人もいるのに。一方で給料も簡単には上がっていかないし、社会保険料も年々増えおり、可処分所得は実際減ってきているのです。
確かに選択肢は無限にあるので、「さてどうしよう」で止まってしまう気持ちもわかります。
ただ、忙しさを言い訳にし続けていると確実に時間は過ぎ去っていきます。
答えは一つしかありません。
現役時代から準備することです。
それも「今日から」がベスト。
なぜ今日からかというと、今日が人生で一番若いからです。
時間がお金を増やしてくれるのです。
なので期間が長いに越したことはありませんね。
20代、30代でなくても間に合います。40代でも50代でも準備は可能です。
ただし、どの世代にも共通してすべきことがあります。
それは、「勤勉に働く」ことと「しっかり倹約する」ことです。
当然かもしれませんが、実はそうでもありません。
まずは支出を見直すという当たり前のこと
どういうことかというと、多くの人が勤勉(あるいは真面目)に働いていますが、一方で倹約の方はしっかりと意識しないとできないのです。何となくでは希望の資産額に到達しない可能性が高いです。
せっかく収入が増えても、必要以上のお金を使ってしまっては貯蓄ははかどりません。
浪費は資産形成の最大の敵なのです。
もし思い当たるなら、資産運用の前にまずは支出を見える化してコントロールすることが先です。見える化すれば現実を直視しなくてはいけないので落ち込みはしますが、たいてい不安は減ります。「何とかするしかない」からですね。
「期待資産額」という考え方
トマス・J・スタンリー&ウィリアム・D・ダンコの「となりの億万長者」に期待資産額という概念が紹介されています。
期待資産額 = 年収 (税引き前) × 年齢 ÷ 10 - 遺産相続分
手持ちの資産が期待資産額を上回っていれば「その所得層・年齢層の人よりもお金持ち」といえるそうです。さらに、期待資産額の2倍あれば蓄財優等生、半分しかないなら蓄財劣等生となっています。
具体的に数値を当てはめて見てみましょう。
25歳 年収 350万円 → 875万円
30歳 年収 500万円 →1,500万円
35歳 年収 650万円 →2,275万円
45歳 年収 900万円 →4,050万円
55歳 年収1,200万円 →6,600万円
遺産相続分や贈与で受け取った財産を除くので、完全に自力で稼いだ金額です。見ればわかりますが、「いやいや、こんなに貯められる訳ないでしょ・・・」と思ってしまうのも無理のない金額です。
よく使われるの以下の年代別の保有資産額の統計とえらい違いです。
20代 平均値 524万円 中央値 300万円
30代 平均値 735万円 中央値 420万円
40代 平均値1,024万円 中央値 650万円
50代 平均値1,689万円 中央値1,100万円
60代 平均値2,062万円 中央値1,400万円
出所:金融広報中央委員会「家計の金融行動に関する世論調査(二人以上世帯調査)平成29年調査結果」
日米の環境の違いということもあるかもしれませんが、それにしても違いすぎます。
貯蓄優等生になると2倍にもなるので、例えば45歳で8,100万円ですから、なんと国内の平均値の約10倍、中央値の12倍です。そもそも国内のこの統計では平均年収ももう少し低いですから、ほとんどいないというのが実情でしょう。住宅を除く純粋な金融資産ですので、世帯年収が1,500万円あってもなかなか厳しい金額です。
それにこの頃は絶賛住宅ローンを返済中だと思いますので、負債を引いた純資産はマイナスというのがよくあるケースです。退職金を使ってようやくローンを完済する訳です。
資産運用のことを考える時間が必要
こんなに現実離れした数字のように見えますが、それでも一つの目標としては参考になります。
繰り返しになりますが、浪費せずに堅実にお金を貯め、そして投資をしてお金にも働いてもらわないとここまで増えることはないでしょう。増えるどころか、貯蓄劣等生ですら平均値より上というか倍(45歳で2,025万円)ですから、資産形成に真剣に取り組むことの重要性がわかります。
長い老後にはお金が必要な訳ですから、厳しい期待資産額を見なかったことにはせずに、自助努力をするのが賢明と考えざるを得ないですよね。なんといっても将来の自分のためですから。
国や会社に頼らずに、経済的に自由な生き方を目指すなら尚更です。
「となりの億万長者」によると、お金持ちほど将来のために資産運用のことに時間をかけているそうです。貯蓄だけではとても期待資産額には到らないので、若い時からしっかりとお金の勉強をし、実践していく必要があるのですね。
今日から準備するのがベストというのはこういう背景があるのです。
まずは浪費をやめ、見える化して支出をコントロール。
そして、次に将来の収入を増やすための自己投資です。
そしてお金に働いてもらうために少額から資産運用をしていきます。